栗原市一迫を走る国道398号を西進し、花山方面へ右折せず直進して国道457号に入るとほどなくして周囲の山々の陰から見え隠れする、ピラミッド形のとんがり山が大土森である。 端正な山容ながら、間近まで近づかないとなかなかその姿を見せない、かくれた存在の山だ。

　大土森は文字三山の一つ大土ヶ森(別名文字富士)と間違えやすいが、大土ヶ森が旧栗駒町・花山村・鴬沢町の旧３町村にまたがるのに対し、大土森はその南方約10km、旧一迫町の西部に位置する。
　大土ヶ森よりひとまわり小さいがかつては一迫町の最高峰だった。　とがった山容は昔から地域の人々に親しまれていたらしく、次のような民話が残っている。

『昔、文字の大土ヶ森と長崎の大土森が喧嘩をした時、大土森の投げた石が大土ヶ森まで届かずに手前に落ちて石ヶ森が出来た。』

　大土森には登山道は無いと長い間思っていたが、やはり登山道は無かった。 ただ、踏み跡あるのみである。 大土森に登るには何箇所か山体への取り付き箇所がありそうだが、国道から最も近いと思われる箇所から登るルートを紹介しよう。


　大崎市国道47号方面から入ってゆくと、岩出山池月から栗原市花山へ向かう国道457号の通称「小僧峠」北側のくねくね曲がった峠道の下りが終わる地点(右カーブ)から西へ左折するせまい道が伸びている。(進入注意、鋭角で左折し難い)
　国道から離れこの道を350ｍほど進むと右側に赤い屋根の廃屋(?)がある。 そのすぐ先の渓流にかかる短い橋を渡ってすぐ右側が山への取り付きポイント(入口)だ。

　入口には左右の電柱の控えに赤いテープが巻かれ目印となっている。　また、入口の右には供養万霊位と刻まれた供養塔が建っている。　農作業の邪魔にならないよう駐車しよう。
　入口を入って作業道はすぐ左右に分かれる。　右の道をまっすぐ進んだあたりに登り口があるのだが、道はあらぬ方向に曲がって行き止まりになる。
　登り口に辿り着くには右の道を選ぶなら間伐材や枝打ちした下枝が散乱、堆積する足場の悪い急坂を登ることになる。
　入口付近の南麓斜面は杉の植林となっており、作業道が網目状に巡っている。　左の道を選べば、この網目状の作業道を拾って歩き、遠回りになるが迂回して登り口に辿り着くことになる。

　登り口には、よくみると先人達が付けてくれた白いビニールひもが風に揺らいでいる。　斜めに登ってゆくと窪地が現れるので左に回り込み登ってゆく。　杉の中で薄暗いが、時折現れる「筆界基準」と記された赤い杭や先人が残した赤テープを頼りに我慢して登ってゆくと、やがて落葉樹の明るい尾根になる。　ここからが本格的急坂登りの始まりだ。
　少し行くと尾根の坂に２箇所ほど穴があいている所がある。 さらに進むと傾斜は増し、鼻こすり坂といった感じで非常にすべりやすい。 気をつけて登ろう。
　あまりに急で一気に上り切れない。　何度か休息して息を整えながら登るとやがて山頂の東肩に出る。　ここからは緩やかな登りとなり、間もなく山頂に着く。

　三角点手前からは北方面の展望が良く、残雪を抱いた栗駒山、さらに大土ヶ森・中ノ森・櫃ヶ森の文字三山、眼下には小田(こだ)ダム湖が見下ろせる。 山頂から西に進むと、西肩の露岩付近からは花渕山、胡桃ヶ岳、みみずく山などの鳴子の山々が絶妙なアングルで一望に見渡せる。

　山頂には２基の石祠のパーツ(上・中・下)計６個の石が転がっていて、どれがどちらのものか判らなくなっていたが、一つには御嶽権現と刻まれていた。 昔から信仰の対象として登られていた事が窺われる。



比高　約２００ｍ　　所要時間＝　登り：３５分　　下り：２５分